平成18年度卒業論文テーマ
平成18年度卒論生に向けて(教官からのメッセージ)
金子研究室では、安心安全の実現に向けた様々な研究テーマに取り組んでいる。
平成18年度はエネルギーの安心安全の観点から小型分散型エネルギーシステム構築のために、バイオマスの有効利用を目指した、マイクロガスタービンおよびガスエンジンに関する研究を行なう。また社会活動ではなくてはならない交通システムの安心安全の観点から、生体信号を用いた居眠りを事前に検知による事故防止システムの開発も行なう。
資源循環型社会、小型高効率分散エネルギーシステム、人間機械系にまつわる諸問題を物理、化学、生体情報などが関係した多重連成問題として捉え定量的に分析することで、機械工学の新分野を開拓する。研究の結果得られた新たな知見を生かして、実際に制御システムや装置を設計し、製作するところまでを体験できることが当研究室の特徴である。学生諸君に期待するものは、旺盛な好奇心、問題の本質を見抜く力である。研究活動に必要な数量的解析の基礎力、設計能力、プログラミングなどは、具体的に研究を進める過程で身に付けられるような体制を整えている。 また、関東近郊の小型分散エネルギープラントや自動車関係の研究所見学を予定しており、社会のニーズを身を持って体感できる。
平成18年4月 金子成彦
<研究室説明会>
4月 7日(金)11:50~12:50(1回目)
4月10日(月)11:50~12:50(2回目)
場所:2号館62C1室
平成18年度卒業論文テーマ(4テーマ)
未利用エネルギー対応マイクロガスタービン発電システムの開発
分散型エネルギーシステムの一つであるマイクロガスタービンに, カーボンフリーなバイオマスエネルギーを適用することを目標としている。 バイオマスエネルギーの特徴である低カロリー性に焦点を当て, 低カロリーガス燃料対応マイクロガスタービン発電システムの構築に取り組む。 本研究室(協力:JAXA)で設計, 試作した低カロリーガス燃料対応燃焼器を,マイクロガスタービン発電システムに組み込み, 組成および熱量の異なる様々な燃料が,ガスタービンシステム全体および要素の性能に与える影響を明らかにする。
バイオガス対応小型高効率ガスエンジンシステムの開発
バイオマスからエネルギーを取り出す方法としてガスエンジン,ガスタービンがあり,一般にガスエンジンはガスタービンに比べて効率が良い。しかしバイオガスは成分が変動するため常に高効率,低公害な燃焼をさせるのは困難で,分散型エネルギーシステムにおける,小型民生用の10kW未満のバイオガス対応エンジンは実現されていない。バイオガスの成分変動に対し要求運転条件を維持する制御手法を確立することが課題である。そこで,燃料組成の違いがエンジンの燃焼に及ぼす影響を明らかにし,バイオマス対応ガスエンジンの運転制御アルゴリズムの構築を行なう。
カオス解析に基づいた居眠り事故事前防止技術の開発
自動車などの運転者の居眠り事故を事前に防ぐことを目的に,従来から行われてきた画像や脳波の計測からは予見できない覚醒時の入眠予兆(注:眠くなる前の前兆を捉えること)を脈波などの生体信号のゆらぎの変化等のカオス解析により判別することが可能な斬新な測定法を提案する。あらゆる状態での被験者の各種生体信号の多チャンネル同時計測を行い,各信号の関係を明らかにする。また物理モデルを利用した脈波計測の意義の検証、計測法の妥当性を裏付けるための根拠調査を行なう。
高精度高機能脈波・血圧モニタリングシステムの開発
高齢化社会を迎えて,非侵襲な方法で日常の身体状態の変化を検知するが注目を集めている。現在のところ,脈波を利用したオシロメトリック式自動血圧計,腕時計型血圧計,光電容積脈波モニタが心血管系計測システムとして提案されているものの,測定精度には疑問が残る。本研究は,生体内で発生する脈波現象を生体外に忠実に再現できるシステムを試作し,理論モデルを構築することで,上記3種類の脈波を用いたモニタリング手法の検証と精度の測定を行い,その上で更なる機能を追加するための研究を行なう。